はだかの雛壇芸人 --- 小島某 ---
ムダに明るい裸の男の声が、カラカラと響き渡る。和気藹々としていた職場が、一瞬で不機嫌になる…… いや、反省していないわけではない。むやみに話の中心になりたがっているのでもない。ましてや今更、誰かを笑わせたいのでは決してない。この手のシチュエーションの場合、男にはそれしか思いつかないのだ。いや、思いつかないというのは正確ではない。それしかやったことがない。他の「刺激に対する反応」を選んでいるうちに、「とき」は来てしまう。皆が思うほど、男は、KY ではない。「今、反応しなければならない!」「今、何か言わなければならない!」「… 今、この瞬間だ!」きっと、「瞬間」は合っているのだ。間違っているのは、「行動」「セリフ」「声」…悪いやつじゃないんだが…またやっちまったな…また「へたこいた…」わけだ。一度ずつの春夏秋冬どんなときも職場では裸で通した彼だ。寒気はもう感じない。ただ、めまい と はきけ は 日々強くなっている。もはや、覚醒していながらにして、人事不省に陥っている。これが現実かどうかすら確かではない。同じシーンを見た「だれかの記憶」なのかもしれない…
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